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【取材記事】おもちゃを通して子育てにより添う 細やかなプランニングをもとに提案する、サステナブル・サブスクリプション

キッズ・ラボラトリー株式会社

動画・アプリ・ストレージなど、月額定額支払い制度で利用している人はご存じのサブスクリプション。キッズ・ラボラトリー株式会社 が取り扱うのは「おもちゃ」です。生後すぐから8歳の お子様がいるご家庭に向けて国内外の高額な木のおもちゃを中心とした 知育玩具を返却期限なしでサブスク・レンタル提供しています。今回は創業のきっかけやおもちゃを再利用する「おもちゃのリレー」、お客様への想いや将来の展望などを、代表の青栁様に伺いました。



【お話を伺った方】


青柳 陽介(あおやぎようすけ)様
キッズ・ラボラトリー株式会社 代表取締役
2003年4月 イリイ株式会社入社後、2008年4月 通販システム事業センターセンター長、2012年1月本社営業部部長に従事。2014年10月 株式会社システムリサーチ首都圏営業グループグループ長を経て、2015年10月 テモナ株式会社執行役員、2017年4月 執行役員CMOに就任。2018年12月 一般社団法人日本サブスクリプションビジネス振興会 業務執行理事を兼任し、2019年5月 キッズ・ラボラトリー株式会社設立。


■プライベート×キャリアチェンジから誕生した「おもちゃのサブスク」

mySDG編集部:創業の経緯から教えて下さい。

青栁さん:子どもの入院を経験したことと、キャリアチェンジの機会が重なったことが創業のきっかけになります。私の息子はネフローゼ症候群という疾患を抱えています。尿にタンパク質が沢山出てしまうため、血液中のタンパク質が減少し、むくみが起こる腎臓の疾患です。幼少期から1回の治療に3ヶ月程の入退院を繰り返していました。
その入院していた小児病院には、おもちゃ完備のプレイルームがあったのですが、感染リスクのある病気を患っている息子はプレイルームの共有のおもちゃで遊ぶことができず、仕方なく病室で一人で過ごす入院生活をしていました。
当時の私は幼児教育にはそこまで関心がありませんでしたが、当時の息子の入院生活を見て、幼少期の大切な体験や教育を与えられていないと感じてしまいました。

一方、キャリア面では、テモナ株式会社 というサブスクリプション型のサービスシステムを扱うベンチャー企業に入社し、社員10数名ほどの規模から東証1部上場に至るまでの事業拡大ストーリーを経験しました。
同時に日本サブスクリプションビジネス振興会という“第三者の目線で公正に評価する”社団法人の立ち上げを担い、振興会の業務執行理事としてサブスクリプションを広める啓蒙活動を行いました。その結果、ニュース番組にも取り上げていただけるようになりましたし、その経験から、フランス、日本、韓国など海外のサブスクリプションの知見やビジネスのノウハウなどを熟知することができました。

順調だったキャリアですが、改めて今後のキャリア形成について考える機会がありましたので、息子の入院経験から感じた幼児教育への想いと、仕事で経験したサブスクリプション。それを合わせたサービスの「おもちゃのサブスク」を立ち上げることにしました。


■キュレーションが特徴、人に優しいサブスクリプション

mySDG編集部:レンタルも身近な「借りる」サービスですが、サブスクリプションとの違いはあるのですか?

青栁さん:レンタルとサブスクには似ている印象があるかもしれませんよね。レンタルは多くのコンテンツの中から自分で選ぶのに対し、サブスクリプションは使い放題のプラットフォーム。そしてキュレーションの特徴はワインソムリエのように特定の分野に精通した人からのおすすめがあり、新たな物やサービスへの出会いや、予想外の体験ができる仕組みです。

mySDG編集部:御社のサブスクリプションには他社にはない、特徴があるそうですね。

青栁さん:はい。それは、上記にワインのソムリエと表現したお客様からのデータのナレッジとITを使った高度なキュレーション(おすすめ)です。例えると、“絶妙なタイミングで料理を提供する”高級レストランのようなサービス。
当社のおもちゃ選定のプロ「おもちゃコンシェルジュ」が、世界中の膨大な数のおもちゃから、幅広い視野と知見、経験を活かし、それぞれのお子さんの特性に合わせてご提案をしています。我々が選定したおもちゃでお子さんが繰り返し遊ぶことで、お子さんの意外な才能に気付くかもしれません。こうしたおもちゃへの意外な出会いが当社の価値だと思います。

mySDG編集部:キュレーションのことをもう少し詳しく教えて下さい。

青栁さん:それぞれのお客様の環境やお気持ちを詳しくヒアリングさせていただき、おもちゃの選定に活かし、お届けすることが当社のキュレーションです。

例えば、お子さんと寄り添いながら過ごすことをお望みの方は、モンテッソーリやステム教育などに基づいた“知育おもちゃ”のご要望が多いので、知育に適した事が多い木製の知育玩具をお届けします。
一方で、出産による急激な生活の変化でストレスを抱えてしまった方などは、ご自身の時間を確保することも大切なので、お子さんが一人で遊ぶことができ、少しでも親御様が休息ができるようなおもちゃをお届けします。

サブスクリプションは一定期間遊びつくし、成長に即していない。または飽きたおもちゃを返却する制度なので、「ものが増えない、部屋が片付く」などがメリットとしてよく取り上げられますが、私としては、ほんのわずかな幼少時期の子育て期間だからこそ、我々のキュレーションで選んだおもちゃを通して親子で楽しく遊んでほしいという気持ちが強くあります。付随するメリットにも魅力はありますが、何のためにこのサービスを選んだかというと、やはりわが子のためだと思いますからね。

mySDG編集部:サブスクリプションの契約期間は半年〜1年以上。という長期契約のイメージがあるのですが、御社は契約期間についても特徴があるそうですね。

青栁さん:はい。契約期間の縛りがないことですね。1ヶ月間のご契約をされる方もいらっしゃいます。
例を上げると、海外駐在員の方が一時帰国される時に参考にする、帰国便利帳 というWebメディアがあり、そこに当社の記事が掲載されている影響だと思うのですが、夏休み・冬休みの一時帰国のタイミングで、お子さんのいらっしゃる海外在住のご家庭から、当社へのご注文がとても多いんです。
お申込み自体は日本にお住まいの祖父母の方からのご連絡が多く、一度に4つほどの契約をする方もいらっしゃいます。ご契約をされた多くの方は、ご家族がお戻りになる翌月にはご解約をされます。

たった1ヶ月の契約なのですが、冬休みになると再びご契約になることがほとんどで、年2回の定期契約感覚でお使いになられていますね。このように、ご契約期間を自由にご利用いただけます。日本にお住まいの既存のお客様でも、長期休暇前に2ヶ月間だけ契約される方も多くいらっしゃいまして、夏休みと冬休み前は繁忙期ですね。


■家庭から施設へ渡すおもちゃのバトン「おもちゃのリレー」

mySDG編集部:「おもちゃのリレー」について教えて下さい。こちらはサブスク事業とは別の取り組みになるんですね?

青栁さん:はい。おもちゃのリレー は、当社の貸し出すおもちゃとは別に、お客様のご家庭で購入されて、不要になったおもちゃを提供いただき、それを綺麗にクリーニングした上で、一つひとつ袋で梱包し、施設に寄付をする活動です。
2年ほど前から活動していて、現在140サイズのダンボール12箱ほどの量のおもちゃが寄贈先を待っています。先日はドナルド・マクドナルド・ハウス様の施設、8ヵ所に寄贈 をしました。
今後、日本にある12ヵ所の施設全部におもちゃを寄贈したいと勝手に思っています!
実は、中古のおもちゃの寄贈先を探すことは案外大変で、各都道府県にある小児病院にご連絡したのですが、病院ごとにそれぞれの事情があり、寄贈するまでに至りませんでした。

ドナルド・マクドナルド・ハウスさんには、我々の事業内容や経営方針、個人的な息子の入院体験からの想いをお話しし、病気のお子さんとその家族のための、支援宿泊滞在施設におもちゃの寄贈をしたい旨をお伝えしました。
入院中のお子さんとご兄弟含めて、皆が自由に遊べるように、おもちゃを使っていただきたい。その想いが伝わり、我々のおもちゃを好意的に受け取っていただけたのではないかと思います。

mySDG編集部:サブスクリプションも、おもちゃリレーも、共にサステナビリティな活動だと思いますが、おもちゃ業界全体を含めた課題などはあるのでしょうか?

青栁さん:二つ課題があると思っています。一つ目は、おもちゃの製造過程において環境への配慮が薄いことです。一部メーカーさんはサステナブル素材を採用していますが、商品にコスト転換されますので、普及することが困難という課題があります。おもちゃを購入される消費者の方には、サステナビリティを選択肢に加えてほしいと感じています。

二つ目は廃棄物の削減に関してです。おもちゃは子どもが使うものなので、どうしても破損が多い。我々はなるべく修理するよう努めていますが、直せないものは諦めるしかなく、廃棄せざるを得ない。破棄を減らしていくには、“修理のしやすさ”や“壊れにくさ”などを追求して、今後のおもちゃの廃棄を最小限に抑えていく必要があると思っています。

我々がおもちゃのリレーを通して、顧客の皆さんにSDGsへの関心を啓蒙することができたら、親御さんを通じてお子さんに伝わるのではないかと思っています。顧客の多くのお子さんは1歳から3歳なので、まだ小さなお子さんに伝えていくには、親御さんへのアプローチが必要ですからね。


■背伸びの成長をしながら、20年後の未来につなぐSDGs

mySDG編集部:サブスクリプションサービスを経営する上で困難だったところはありますか?

青栁さん:一番難しいところはおもちゃの調達です。返却時にはどのおもちゃが返ってくるかわからず、返却された在庫の中に最適なおもちゃがない場合、短期間で調達をしないといけません。
しかし、新しいおもちゃ調達に比重が傾くとコスト上昇を招くばかりか、返却されたおもちゃのクリーニング作業に手が回らず、業務が多忙になり過ぎて、結果として、お客様へのお届け遅延が発生します。業務フローも含めた総合的なバランスを考えつつ、新規顧客を増やすことはとても難しい。計画的に社内の人員配置をしないといけませんので、物凄い急成長は難しい。しかし成長は必要なので“背伸びをする” 程度の成長をイメージしています。
サブスクを熟知していたつもりでしたが、こんなに難しいと思わなかったです。

mySDG編集部:今までにどれくらいのおもちゃをお届けしたのですか?

青栁さん:現在事情により公開していませんが、過去のリリースでは、サービスの登録者は3,000名を超えて、お届けしたおもちゃは2021年10月末時点で10万個です。我々のサービスを多くの方に知っていただければ、おもちゃを使い捨てにせず、大切に繰り返し使うことができる。サステナブル目標の実現に大きく貢献できると思います。それに会社が成長していくことで地元地域にも雇用創出を促すことができると思っています。

mySDG編集部:今後の展望や目標を教えて下さい。

青栁さん:当社のパーパスとしては「20年後の未来を作る」としております。幼少期に利用したサービスの良さを実感していただき、ご自分が大人になり子を持った時、ご自身のお子さんにも再び同じサービスを利用していただきたいと思っています。

その頃には、おもちゃのサブスクリプションを日本で当たり前のサービスにしたいと思っているんです。当社を含めた同業種の会社がこのサービスを長期継続し、認知度を上げ、世の中の人たちが我々のサービスを知ってくだされば、より便利でサステナブルなおもちゃとの関わり方が増えると思います。

今後も課題に向き合いつつ、SDGsへの取り組みを継続していくには、お客様の気持ちを捉えることが重要だと思っています。親御さんの気持ちに寄り添いながら、今後も気持ちのいいサービスにしていきたいですね。

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