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【取材記事】生産から手に届くまで地球環境に優しい取り組みを意識したリサイクル糸
澤田株式会社
近年、環境保護を考えたサイクル素材を使った原材料や商品が続々とリリースされ、私たちの生活でもより身近なものとなりつつあります。
今回は、マテリアルリサイクルPET100%使用のニット原糸「ECOLILY(エコリリー)」の企画販売をしている澤田株式会社(本社:大阪府泉大津市)の南川真之さんに、事業をスタートさせたきっかけや開発、そして、国際的な認証「OEKO-TEX® STANDARD 100」の取得にまつわることを中心にお話を伺いました。
【お話を伺った方】
南川 真之(みなみがわ まさゆき)さん
澤田株式会社 TQC & DELIVERY UNIT 部長代理職
糸商として創業した50年以上の歴史あるSAWADAで日本各地のニット産地の優秀な工場とのネットワークを培い、日本全国ないしは全世界にニット原糸を供給。
信頼におけるパートナー企業との協業により、素材の良い部分を活かして高い技術力でベストな糸を生産できるチームをコーディネートしている。
ニット原糸の企画開発および生産品質管理業務に従事。
mySDG編集部:泉大津は全国でも有名な繊維産業の街です。このような土地柄の中、御社が今回、リサイクル糸の事業を立ち上げたきっかけはどのようなことでしょうか。
南川さん:繊維の生分解やリサイクルはヨーロッパを中心に先駆けてやってきましたが、近年、日本でもテレビなどでSDGsが取り上げられたこともあり、一般消費者もリサイクルを身近に感じられるようになりました。
今回のリサイクル糸の事業を立ち上げた目的としては、世界最高水準の繊維製品の安心安全の証であるOEKO-TEX®(エコテックス)STANDARD 100 やエコマークを取得し、第三者および第三者機関が認めたものということを、お客様にアピールしたいという思いがありました。
mySDG編集部:第三者および第三者機関の認証というのはどのようなことですか?
南川さん:エコマークの認証だけでなく、OEKO-TEX® STANDARD 100という安心安全な糸であるということを認証してもらい、一般財団法人ニッセンケン品質評価センター という検査機関で「マテリアルリサイクル100%」という証明書を出してもらったりするなど、自社以外の他の機関に証明してもらうことです。
我々はECOLILYを作るにあたり、「安心」を訴求し、認証を取りたいので、やはり第三者のエビデンスが欲しかったのです。
mySDG編集部:ECOLILYを出す前までの工程で大変だったこと、工夫したこと、喜ばしいことといったエピソードを教えていただいてもよろしいでしょうか?
南川さん:ECOLILYは、ポリエステルの細い糸を編んで、リリアンの糸にしています。さらに工程を変えることで他にはない糸を作りました。
糸の太さ表す単位というのが番手(ばんて)と呼ばれていますが、こちらの糸では4種類で展開しています。糸の太さに関してはセーターでも帽子でも小物関連であっても色々な用途で使ってもらえるよう、試作を繰り返して、複数の番手から使いやすい番手を4つ選びました。糸の太さのイメージは、ニットで使う糸です。
リリアンの糸にするには色々な組み合わせをしながら、品質の良いものを作り上げました。あとは、OEKO-TEX® STANDARD 100の認証を取ったのですが、申請から取得するまでに半年かかりました。
私たちは、他にない安心安全な糸を使いたかったのです。
mySDG編集部:ECOLILYの強みや特徴について教えてください。
南川さん:ECOLILYを作るまでにたくさんの工程があり、時間と手間をかけ、他社が真似しにくい糸を作ったことが強みです。効率的な生産を求めるがゆえに、細かい工程管理をしたくない業者が多いため、弊社はそういうニッチなところに勝機があるのはないかと考えました。
mySDG編集部:リサイクル糸ECOLILYをリリースした後のエピソードを教えてください。
南川さん:世界的に有名な超大手の会社様が、年間で10トンから20トンくらいのリサイクル糸を使っています。ほかにも日本の有名DCブランドから1トンくらいの糸のオーダーをいただいているので、ECOLILYの糸を使ったセーターがこれから出てくると思います。DC系のブランドでは、ECOLILYに関する良い評価いただいております。上海や香港にも輸出しています。
mySDG編集部:円安やコロナ禍による影響はありましたか?
南川さん:コロナ禍でアパレル業界も新しい商品企画に意欲がないというか、製品としての在庫を持ちたくないようなので、最初の反応は消極的でした。ただ、1年か半年くらいでコロナの意識が変わってきたこともあって、少しずつですが、我々のECOLILYを手に取っていただけるようになり、評価してくださるようになりました。
mySDG編集部:ECOLILYのようなリサイクル糸は、手芸店でも取り扱っているのでしょうか?
南川さん:ECOLILYという名ではありませんが、BtoC向けでは「puny eco(プニーエコ)」という商品名で有名手芸チェーン店でも取り扱っています。
社内で作ったECOLILYを消費者様にもお届けしたいっていうような形で、4種類あった番手の一つを「SAWADA MARCHE(サワダマルシェ)」というオンラインショップ内の手芸ブランド「sawada itto(サワダイット)」で販売し、大手有名手芸店チェーンといった実店舗、卸先でも販売させていただいています。
puny ecoの素材がポリエステルなので、春夏秋冬問わず年間使っていただけるような風合いです。
mySDG編集部:リサイクル糸を販売することによって、ステイホームの影響で手作りされる方もいらっしゃったかと思いますが、消費者の方の反応はどうなんでしょうか?
南川さん:puny ecoは、通常の新商品が出たとき以上に商品の売れ行きは良かったです。我々は新作の糸を出したタイミングで、糸のキットを同時販売する流れになっており、そちらもお客様からご好評いただきました。
今回、認証を取ったpuny ecoの前身商品「puny(プニー)」という主力商品がありますが、こちらも継続的に好評をいただいております。
糸を染めるときは、染料を使うので、赤ちゃんにとって成分的にきつい規制物質があります。puny ecoに関しては、赤ちゃんの肌に触れても全く問題がなく、OEKO-TEX® の中でも一番高いクラスの認証を取れている安心な糸です。
例えば、お母さんが赤ちゃんのものを編んでいても無害なので、そういう点もセールスポイントだと思います。
mySDG編集部:今後、御社の商品を含め、SDGsといったチャレンジしたいことを教えてください。
南川さん:BtoB向けの糸に関しては、基本的には天然繊維、リサイクル原料、生分解性のある原料を極力使用するよう心がけています。
綿を使う場合、栽培するのに何千リットルという大量の水が使われています。それを軽減するために、第三者機関の認証が取れている綿もあるので、環境に優しい綿花栽培から収穫した綿を作ったものを綿糸として使うようにするなど、極力環境に優しい原料を使った素材開発を意識しています。
BtoBで澤田株式会社としてSDGsを推進すると同時に、ブランドにもそういったイメージを展開させています。
南川さん :また、「NETENE.(ネテネ)」という女性向けのニット ウェアは、SDGsをうたっています。商品に生分解素材を使っており、こちらのキャッチコピーは「土に還るニットウェア」です。商品を土の中に埋めると、微生物の働きによって自然に還るのです。
澤田株式会社として自社ブランドを通じて、SDGsを広く浸透させていただきたいと思います。
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