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【取材記事】2015年よりフルオンラインのアウトソーシングサービスを開始し、現在は世界33カ国からオンラインで業務に従事。自分らしい生き方に合わせた働き方を実現するまでの道のりとは

株式会社ニット

株式会社ニットは、「未来を自分で選択できる社会をつくる」というビジョンを掲げ、2015年よりフルリモート前提で創業。オンラインアウトソーシングサービス「HELP YOU(ヘルプユー)」を運営しています。現在、約400人が日本全国・世界33カ国からオンラインで業務を遂行し、令和3年度「ホワイト企業アワード」や令和3年度「WOMAN’s VALUE AWARD 優秀賞」など、多数の受賞をされています。今回はその受賞の背景や今後の展望について、株式会社ニット 広報担当の小澤さんにお話を聞きました。


お話を伺った方

株式会社ニット 広報 小澤 美佳様
2008年に株式会社リクルートへ入社。
10年間、HR一筋。中途採用領域の代理店営業、営業マネージャーを経て、リクナビ副編集長として数多くの大学で、キャリア・就職支援の講演を実施。採用、評価、育成、組織風土醸成など幅広くHR業務に従事。
2018年 中米ベリーズへ移住し、現地で観光業の会社を起業。
2019年にニットに入社し、営業・採用などを経験後、現在は広報として活動中。趣味は海外旅行。これまでに66カ国を訪問。

■プライベートな事情を理由に仕事を諦めることがない世界を作りたい


mySDG編集部 多田(以下多田):創業の経緯について教えてください。

広報担当 小澤さん(以下小澤さん):創業前、代表はITベンチャー企業に10年ほど勤務したのち、起業アイデアを探すためにアメリカを横断していました。その際に、日本に住む知人から仕事を依頼され手伝う機会があり、「PC一つあればどこでも仕事できる」と感じたのです。

当時は7-8年前でリモートワークという言葉もなじみがなかった時代ですが、こういうスタイルなら、子育てしながらでも介護しながらでも仕事ができる。プライベートな事情を理由に仕事を諦めることがない世界を作れるかもしれない。

そう思い、リモートワークを前提にした会社で働くということや、雇用を生み出していくことを事業の軸として、2015年にサービスを立ち上げました。

多田:2015年にリモートワークを前提にするというのは時代的に早かったのではないでしょうか?

小澤さん:そうですね。周囲は「そんなことできるの?」という反応でした。私が入社したのは2018年ですが、当時もまだまだ「それはベンチャー企業だからできる話だよね」といった雰囲気はありました。

多田:御社が提供している「HELP YOU*」は創業期から提供していたサービスですか?

*オンラインアウトソーシングサービス。人事、経理、営業事務、SNSの運用代行など、さまざまなバックオフィス系の業務を、当社に登録されたメンバーがお客様企業の業務を全てオンラインで代行。

小澤さん:はい。もともとは合同会社として「HELP YOU」を立ち上げて、2017年に株式会社化しました。ですので、サービスの方が先なんです。

多田:創業期から成長し続けているということは、2015年当時から世間はオンラインでのワークスタイルを求めていたということなのでしょうか。

小澤さん:まず私たちが解決したい社会課題は2つあります。1つは企業様の労働力の確保、もう1つは働き手への働く場の提供です。その観点でサービスを提供しており、「ベンチャー企業で少人数でやっていて猫の手も借りたいが、人を雇うほどでもない」という会社様が、人脈なども含めて当社のサービスを見つけてくださり広まっていきました。

特に今回のコロナは大きな影響がありました。コロナ前までのお客様は新しいものを取り入れることに積極的な方が多かった印象ですが、現在はテレワークが当たり前になったので、外部の方にアウトソーシングするという考え方は一般的になってきた気がします。


ニット社のサービス一覧

■「働き手の幸せ」と「会社の成長」の両輪を追求

多田:今回mySDGでは、「ホワイト企業アワード」受賞の件と「WOMAN’s VALUE AWARD 優秀賞」受賞の件のプレスリリースを掲載させていただきました。こちらは、御社内での取り組みのお話でしょうか。

小澤さん:はい。今年はそれ以外にも10個の様々な賞をいただきました。現在日本全国・世界33カ国から400人ほどメンバーがいますが、その人たちの働き方や組織の作り方が特徴的だという点で多くの賞をいただきました。

多田:SDGsの観点だと「8.働きがいも経済成長も」に当てはまると思いますが、御社としてもSDGsは意識していますか?

小澤さん:まさに「働きがいも経済成長も」大事にしています。会社はボランティアではないので利益を追求していきますが、人の幸せも大事で、その両輪を追求していくことが大事だと考えています。

加えて、「教育」をより良くしていくことにも着目しています。当社は世界のいろんな場所にメンバーがいるので、オンラインで宮城県の小学生とインドネシアのメンバーをつないだり、熊本の高校生とアフリカのメンバーをつないだりする取り組みをしています。オンラインが主流になったことで、留学に行きたくても行けなかった学生や、そもそも行くつもりがなかった学生たちに、簡単に異文化交流の機会を提供できるようになりました。

オンライン異文化交流会イベントの様子

多田:そうしたSDGsに関連した取り組みを始めることになったきっかけはあるのでしょうか。

小澤さん:最初からSDGsを意識していたわけではありません。もちろん言葉としては耳にしていましたが、私たちの仕事はアウトソーシング、つまりお客様に人の仕事を提供するものです。働き手の方々が幸せであれば、それがお客様にも還元されていきます。そのため、「働きがいと経済成長」の両輪はSDGsに関わらず重要視していました。

■ほとんどがフリーランス、オンライン、働く場所も時間もバラバラという中での組織づくり

多田:「働きがいと経済成長」を推進していくうえで、なにか課題はありますか?

小澤さん:大きな視点で見たときに、働きたくても働けないという人たちがまだまだ多いように感じます。特に地方の町では、「私はレジ打ちしかできないから」「私は介護で忙しいから」と思い込んでしまい、自分らしい挑戦をすることに対して希望すら持たない、また社会風潮のおかげで持てないという人たちが多い印象です。

また、元々は優秀なキャリアウーマンで今は専業主婦の友人がいるのですが、声をかけても「バリバリ働く世界に戻るのは怖い」と謙遜します。どうすれば一歩を踏み出せるのか、世の中の風潮を変えられるのかといった点は、課題に感じています。

多田:世の中にはそうした課題がある中で、御社はWoman’s Value Awardを受賞されています。御社ではどのような取り組みをされているのですか?

小澤さん:当社は85%以上が女性です。先ほどの「戻るのが怖い」というのは、家事や子育てと両立ができるのかという不安が大きいと思うので、女性たちが子育てや介護しながらでも働きやすい環境を作っています。例えば「ワークシェアリング」といって、複数人で業務に対応するようにしています。そうすると、例えばお子さんが熱を出しても、他の方が対応してくれるので、仕事を止めてしまう不安なく休むことができます。また、些細なことも言いやすい空気を作ったり、相談できる場を設けています。

多田:オンラインの場で「言いやすい雰囲気」はどうやって作っているのですか?

小澤さん:キックオフや表彰会、お花見や忘年会、運動会などのオンラインイベントを積極的に行っています。また、サークル活動のようなオンラインコミュニティも活発で、業務に関することから趣味の話まで43個ほどあります。入社したての頃は人との関係性を作るのは怖いと思いますが、コミュニケーションを活性化させたり、心理的安全性をうむための仕組みを意図的に取り入れています。


新人フリーランスを迎える『オンラインWelcomeParty』の様子

多田:素晴らしいですね。ホワイト企業アワードはどういった取り組みが評価されたのですか?

小澤さん:同じく、オンラインでの組織作りです。400人中380人がフリーランス、オンライン、女性が多い、働く場所も時間もバラバラという難しい状況で組織を作っている、という点を評価いただきました。

多田:評価されるためには、なにか数字を提出するのでしょうか?

小澤さん:定着率などの働き手の観点と、業績的な観点で数字を出しています。半年に一度、従業員幸福度という調査をやっているのですが、どの数字が全国平均よりも高く驚かれました。売上も毎年伸びていますし、働きがいと経済成長の両方をしっかり取り組んでいるということを示しています。

■多様性と幸せを追求する会社を目指す


ニット社のメンバーのみなさま

多田:最後に、今後の展望や目標があればお聞きしたいです。

小澤さん:多様性と幸せを追求していきたいです。
これから日本の人口が減っていくことは事実で、その中でこれまで通りの「20代、元気な若手の男性」などの条件で働き手を確保していくことは難しくなります。また、働く人たちの「生きがい」にも着目する必要があります。

そのため、会社が存続していくために、どんな人でも可能性があるという多様性の観点や、プライベートも含めた幸せと会社の両立を、当社としても大事にしていきたいと思っています。

また当社はオンラインが主流ですが、絶対にオンラインが良いと考えているわけではありません。みんなが直接触れ合う機会も大事だと思っています。世の中の変化に柔軟に対応しながら、今後も働く人たちの幸せを追求していきます。

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