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【取材記事】服は捨てずに“染め直し”で生まれ変わらせる “洋服染め直し”アップサイクルプラットフォーム「somete」

株式会社PlayBlue

アパレルロス(衣類廃棄)が重要な社会課題として取り上げられる昨今。その大半が家庭からの廃棄衣類であることはご存知でしょうか? そんな家庭内のアパレスロスを“染め直し”のキーワードで挑むのが、“洋服染め直し”アップサイクルプラットフォーム「somete」です。「眠っている服をずっと着たい服に」をキャッチフレーズに、全国約40の工房やクリエイターと連携し、洋服の「染め直し」サービスを提供しています。今回は「somete」を運営する株式会社PlayBlueの代表取締役CEO青野祐治さんに、「somete」誕生の経緯やサービスの魅力のほか、地域と連携してアパレルロスを削減するアップルサイクルコミュニティ「まちクローゼット」の取り組みについても話を伺いました。


【お話を伺った方】
株式会社Play Blue 代表取締役CEO 青野祐治(あおの・ゆうじ)さん
大学卒業後、ファッション系広告会社や大手広告会社を経てフリーランスのPRプランナー/編集者に。 その後、スタートアップでオウンドメディアの編集等を行う傍ら、循環型地域経済に興味を持ち、 2018年に複業で地元のローカルストーリーメディアを創刊。 地場野菜のストーリーを“一杯のカレーで味わえる”「カップカレー」のプロデュースや地元の未来を考えるトークイベントを主催。 ローカルメディアの活動から得た経験をきっかけに複業として『染め文化の継承』と『衣類ロス削減』を目指すサービス「somete」を立ち上げ。 Startup Studio by Creww、渋谷QWS、OPAアクセラレータープログラム2021 にプロジェクト採択。Gaiax Startup Studio 賞受賞。循環型経済をデザインするグローバル・アワード「crQlr Awards (サーキュラー・アワード)2022」にて審査員賞を受賞

■クローゼットで眠る服が染め職人の手でよみがえる

自宅で眠る洋服と全国の染め工房を結ぶプラットフォーム「somete」

mySDG編集部:2022年3月にサービス開始した「somete」はどのような思いから立ち上げられたのでしょうか?

青野さん:「somete」の根底にあるのは、「家庭内のアパレルロス削減」と「地域産業の活性化」の実現です。クローゼットに眠る大切な服を染め直すことで衣類廃棄を減らし、同時に日本が誇る染物文化の継承にも焦点を当てています。

mySDG編集部:ちなみにアパレルロス削減に対して、“染め直す”という解決策を思いついたのは、なぜですか?

青野さん:以前複業として、出身地である埼玉県越谷市で活躍するプレイヤーを取材するローカルメディアを自身で立ち上げました。その時に藍染め工房の方と出会い、僕自身が藍染めの魅力を体験したことがきっかけです。

というのも、誕生日にもらって大切に着ていた白シャツの襟元が黄ばんでしまい、クローゼットの中で行き場をなくていました。外に着て行くには憚れるけれど、捨てるのは忍びない……。どうしようかと悩んでいたときに、藍染め職人の方に染め直しを依頼してみることにしました。2週間後に手元に届いたシャツを見て、正直驚きましたね。黄ばんでいた白シャツがきれいな藍色に仕上がっていて、ある意味サプライズのような衝撃を受けました。

mySDG編集部:藍染めに魅了された瞬間ですね。

青野さん:そうですね。自身の体験が「somete」のヒントになりました。同時に、藍染めは化学染料の普及によって減少し、職人の方からも「藍染文化は存続の危機に面している」というお話しを伺っていました。藍染めの一大産地として栄えてきた埼玉県越谷市には、かつて数百軒の藍染め工房がありましたが、今では1軒しか残っていないそうです。職人の高齢化が進み、後継者がなかなか見つからない。そんな厳しい状況にある染色産業を元気にすることが「somete」の大きな柱の一つです。

当初は藍染めに絞ったプロダクトやサービス開発を考えていたのですが、調べる内に、全国には藍染めに限らず、黒紋付き染めなどの伝統工芸や廃棄苺を使った「いちご染め」、珈琲の捨てがらで染めた「珈琲染め」など、さまざまな方法で染めを行う工房の存在を知りました。これらの工房をプラットフォーム化して、廃棄してしまう洋服を染め直し、再び着続けることができたら素敵だなというところから「somete」はスタートしています。

■天然素材の染料にこだわった約40の染め工房と提携

mySDG編集部:青野さんが思う「somete」の魅力を教えてください。

青野さん:やはり全国約40の染め工房とネットワークを結び、プラットフォーム化していることですね。おそらく日本初の試みだと思います。なかでもわれわれのこだわりは、化学染料は使わず天然素材の染料で染めを行うなど、地球環境に力点を置く工房さんと連携している点です。廃棄予定の食品などを染料に用いるなど、フードロス削減に貢献する工房さんも多くいらっしゃいます。

mySDG編集部:染められる色も多彩で、淡いピンクや珈琲の色に近いブラウンなど、選択肢が色々あるのはうれしいですね。

青野さん:人それぞれ好きな色はありますし、ユーザーが好きな色に染め直すことができるのも「somete」の特長の一つだと思います。

mySDG編集部:ユーザーはどういった層の方が多いのでしょうか?

青野さん:20代、30代の女性が中心ですが、一方で50、60代の女性からオーダーをいただくことも結構多いですね。

mySDG編集部:個人的に50、60代の方は染物が好きな方が比較的多い印象ですが、逆に20代の若い方はどういった観点から「somete」を利用されるケースが多いのでしょうか?

青野さん:単純に「面白そう」というエンタメ性や、これまでにないコンテンツ体験を期待されているのかもしれません。自分の持ち物である洋服がどんな仕上がりになるのかワクワクしますし、染めは手仕事ならではの味があって、唯一無二の色合いに生まれ変わる喜びが味わえます。染め文化とは縁遠い方でも「なんだか楽しそう」だからとカジュアルにやってみようという方が多いですね。あとは、SDGsの文脈から興味を持って、サービスを利用していただく方もいらっしゃいます。

mySDG編集部:「染め文化」がエンタメに変換されるのは、これまでにない視点ですね。染め文化をエンタメのように楽しむというのは、新しい切り口かもしれません。

青野さん:これまでにないコンテンツ体験として楽しんでいただきながら、結果として「地球環境にいい」とか「かっこいい」という世界観を目指していきたいですね。

■地域ぐるみで衣類廃棄を減らす「まちクローゼット」の取り組み

mySDG編集部:「somete」では家庭内のアパレルロスの取り組む一方で、地域全体でアパレルロス削減に貢献する「まちクローゼット(以下、まちクロッ)」も立ち上げられたそうですね。「まちクロッ」の取り組みを簡単に教えてください。

青野さん:「まちクロッ」は、“服の循環を生み出す”ことを目的に、「Color(服の染め直し)」「Pass(服の回収)」「Trade(服の交換)」を軸にアパレルロス削減を目指す期間限定のコンセプトストアです。 “自宅のクローゼットのような感覚で、地域の方々の着なくなった洋服が集まり、入れかわり、循環していく”ことを目指して立ち上げました。開催はまだ一度のみですが、初回は株式会社OPAとの共創により2022年7月23日〜9月25日に高崎オーパにオープンしました。

mySDG編集部:期間限定ショップではどういったサービスを提供されたのですか?

青野さん:染め直し衣類のビフォーアフターの展示・販売やファッション・アクセサリー・タンブラーなどのアップサイクルブランド商品の販売のほか、「洋服の物々交換」イベント、ビニールプールを使った染め直し体験などのワークショップなど、さまざまな催し物を企画しました。なかでも、カプセルトイのハンドルを回すと5種類の染め色からランダムに出てきた色に染め直しができる「染めガチャ」は、Instagramで24万回再生され、話題になりました。

mySDG編集部:着なくなった服を持参すると、他の方が持ち込んだ服を3点まで持ち帰ることができる「洋服の物々交換」はまさに服の循環を生み出す面白い企画ですね。

mySDG編集部:ありがとうございます。都内を中心に「洋服の物々交換」を展開する「Rationaloop」とのコラボによるものですが、都内では若い方の参加者も多く、コラボすることでZ世代やミレニアル世代(2-30代)に参加して頂きたいとの思いで取り組みました。。参加していただく方が増えれば、結果として衣類の廃棄も減りますし、地域全体に良い循環が生み出せるのも「まちクロッ」の魅力だと思います。

mySDG編集部:初回開催されてみて、手応えはいかがでしたか?

青野さん:正直、まだまだこれからというところですね(笑)。事業化すると、どうしても社会性と経済性の両立が求められるので、その点で言えば「まちクロッ」は社会性の高い取り組みである一方で、ビジネスとしていかに成り立たせるかが今後の課題です。とはいえ、課題が見えたというのも大きな収穫でしたし、「somete」の展開を考えるにあたってもよいヒントが得られました。

今回開催した「服の物々交換」に参加された方は20、30代の方が多かったのですが、その流れで染め直しのオーダーをいただいたり、「染めガチャ」をやっていただいたり、「服の物々交換」起点に「somete」のサービスを利用する流れが生まれたのは新しい発見でしたね。今後はポップアップなどのリアルな場を通じて、アップサイクルの面白さを多くの方に体験してもらうことが、われわれの取り組みを広げるフックになるように感じました。

■日本独自のコンテンツとして世界に発信

『しぶや・もったいないマーケット』で開催した染め直しのワークショップでのひとコマ

mySDG編集部:今後はどのような展開をお考えですか?

青野さん:将来的には海外進出を目指しています。海外の方に日本の染物文化を訴求しつつ、世界中から「somete」にアクセスしていただけるような流れを生み出していきたいですね。昨年10月に渋谷で開催された『しぶや・もったいないマーケット』に参加した際、外国人観光客の 方々に染め直しのワークショップに参加いただいたり、染め直し衣類を購入いただいたりと、思いがけず好評をいただきました。

mySDG編集部:欧州諸国など環境先進国においては、アパレルロスの文脈でも「somete」のサービスは響くかもしれませんね。

青野さん:そうですね。日本独自のコンテンツとして世界に発信していくという切り口は今後のマーケットとして非常に可能性を感じています。

mySDG編集部:今回お話を伺って、アパレルロスという社会課題を解決しつつ、埋もれてしまった日本のカルチャー(染物文化)を世界に発信していくという役割が「somete」には期待できるように思いました。

青野さん:まさにわれわれが目指す世界ですね。「somete」は日本の伝統文化を守りつつ、世界のアパレルロス削減にも一役買えるサービスである感じています。まだ始まったばかりですが、より多くの方にアクセスいただけるようさまざまなブランドとのコラボ企画なども準備を進めているので、今後の展開にぜひご期待いただきたいです。

【サービス情報】
「somete」洋服染め直しアップサイクルプラットフォーム 

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