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【取材記事】AIスタイリストが「手持ち服」からコーデ提案。着回しの悩みを起点にサステナブルなファッションライフを後押し

株式会社STANDING OVATION

アパレル業界の大量廃棄が問題視される中、「着回し」を軸にサステナブルな循環型ファッションの実現を目指す企業があります。株式会社STANDING OVATION は、一般ユーザー向け(BtoC)にクローゼットの中身をデジタル化するオンライン・クローゼットアプリ「XZ(クローゼット) 」を運営するファッションテック企業。「XZ」は、AIスタイリストが手持ち服を活かした着回しコーデを提案し、クローゼットに眠っている服の有効活用を促します。さらに企業向け(BtoB)に、手持ち服とのコーデをシミュレーションしながらWeb接客が受けられるOMOソリューション「XZ-biz(クローゼットビズ)」をあらたにリリース。手持ち服に合う必要な商品を買い足せることから、無駄買いを抑制し、SDGsに貢献するサステナブルな買い物体験を提供します。

今回は株式会社STANDING OVATION代表取締役 CEOの荻田芳宏さんに、サービス立ち上げの経緯や「XZ」「XZ-biz」活用の魅力、さらにファッションとSDGsの両立についてお話を伺いました。

【お話を伺った方】
代表取締役CEO 荻田芳宏(おぎた・よしひろ)さん
早稲田大学卒業後、博報堂に入社。プロモーション企画や「モーターショー」「愛知万博」等のイベント プロデュースを経て、 タレントやモデル・アーティストの広告キャスティング、CM音楽タイアップなどを担当。その後「魔法のiらんど」役員陣とネットベンチャーの立ち上げに参画。モバイルコンテンツの プロデューサー、ブランド戦略部長を経て、グループ最年少で取締役COOに就任。新規事業管掌の役員として、女性向けサービス、スマホアプリ事業やソーシャルゲーム事業等を立ち上げる。2014年に、STANDING OVATION(スタンディングオベーション)を創業し、「クローゼットを持ち歩くファッション体験を創る」というビジョンの社会実装を目指す。


■「服はあるのに着ていく服がない」という悩みに着目

mySDG編集部:「女性の着回し」をキーワードに起業した背景を教えてください。 

荻田さん:シンプルに周りの多くの女性たちから「洋服はいっぱいあるのに、実際に着ていきたい服がない」という声をよく聞いていたんです。女性ファッション誌でも、常に「着回し」という言葉がタイトルを飾るのを見ていて、未解決の課題として感じていました。着回しとは、持っている服のバリエーションをいかにつくるかということなんです。それができないから物理的に服は持っているけれど、「着ていく服がない」「同じ服を着ていると思われたくない」というインサイトにつながっていくのだと周りの声から感じていました。

「XZ」に手持ちのアイテムを登録すると、AIスタイリストが天気や気温に合わせた1週間分の着回しコーデを瞬時に作成する

mySDG編集部:サービス立ち上げの際には、特にどういった点を意識されたのでしょうか?

荻田さん:当時は雑誌でもストリートスナップなどのコーディネート参考情報はたくさんあったんです。その中で「XZ」は手持ち服を有効活用してバリエーションをつくる「着回し」を解決することを目指していました。あくまでも自分が持っている服で実践的なよりリアリティのあるファッションの悩みを解決することにフォーカスして、当時から開発していましたね。

■AIスタイリストとユーザー間交流で個人の悩みをすくい取る

mySDG編集部:「XZ」はAIスタイリストがコーデを自動作成してくれる一方で、着こなしのQ&A機能を通して、ユーザー間でのやりとりもできます。人と人との交流は、必要要素として考えられていたのでしょうか?

「着こなしのQ&A機能」の画面

荻田さん:現行サービスではAIスタイリストがコーデを提案していますが、サービス開始当初はユーザー間のコミュニティをつくって、コーデ提案を展開していたんです。おしゃれな人のクローゼットはやはり気になるので、他人のクローゼットを覗き見した上で、自分の服と人の服を組み合わせて、持ち主にもそのアイデアがシェアされる仕組みを最初に作りました。というのも、結局アイデアがワンパターン化することで、コーディネートが固定化され、結果バリエーションが出ないわけなので。そのあたりを人のアイデアによって気づきを得られたり、インスパイアされたりする設計が作れるのは面白いのかなと思いました。のちにAI技術が一般化してきたので、ユーザー間提案ではなくAIの自動提案に切り替えた背景があります。

ただ、AIは学習データを元に正解に近づける提案をするだけなので、意外な発見や驚きがどうしても少なくなってしまうんです。そこを解決するために、ユーザー間の交流を通して、新しい気づきや発見が得られることを目的に「着こなしのQ&A」を残している感じですね。AIは数とスピードには秀でているのですが、新しい意外な発見という点ではやはり人とのコミュニケーション中の方が生まれやすいので、現状は並走させています。

mySDG編集部:ユーザー間ではコーデの画像を作ってわかりやすく提案するなど、回答の質の高さに驚きました。

荻田さん:そうですよね。コラージュを作れる機能があるので、ユーザー間でも手軽にコーデ提案ができるんです。Q&Aを通して個人の悩みがちゃんと解決されていますし、Q&Aを通して見えるユーザーのインサイトやお悩みは貴重な情報だと思います。ファッションが持つ本来のエモーションナルな部分でいうとQ&Aには価値があると思いますので、今後さらに盛り上げていきたいという意味で現状テコ入れを行っています。

mySDG編集部:ちなみに「XZ」に搭載されている「クローゼット診断機能」はクローゼットの中身や手持ち服の傾向を可視化して、個人ではなかなか解決しにくいクローゼットのお悩みを解決してくれる機能です。診断後に着用頻度が低く表示され、不要になってしまったアイテムの買取リユースもお手伝いしてくれるそうですね。

「XZ」には手持ち服の総価値・着用回数・コスパ・色・ブランドをグラフやランキングで可視化する「クローゼット診断機能」を搭載

「XZ」経由での場合は、査定金額20%UPで買取が可能

荻田さん:はい。資本業務提携先の株式会社トレジャー・ファクトリーが運営する「トレファクスタイル」の宅配買取と連携して、クローゼット内の整理もお手伝いしています。僕らが提供しているのはクローゼットサービスですが、タンスの肥やしを蘇らせつつも、やはり年齢的に合わなくなるなど、卒業していくアイテムもあるわけです。そういったアイテムをほかの人のクローゼットに受け渡していくことで、それぞれのクローゼットの中身を循環させていきたいと思ったんです。アイテムが活躍する場所に再配置されて、みんなのクローゼットが最適化されていく良さがありますよね。

■「XZ-biz(クローゼットビズ)」が叶える「手持ち服」を活かした買い物体験

mySDG編集部:あらたに店舗やECサイトで展開するOMOソリューション「XZ-biz(クローゼットビズ)」をリリースされています。サービス内容を詳しく教えてください。

荻田さん:「XZ-biz」は、アパレル企業のECサイト上で気になっている商品とお客様の手持ちの服との組み合わせをシミュレーションして、手持ち服に合う商品を提案するサービスです。元々は三井不動産が運営する「LaLaport CLOSET(ららぽーとクローゼット)」で実証実験を行い、一般メニュー化したものです。「LaLaport CLOSET」での実証実験では三井ショッピングパークの公式通販サイト「Mitsui Shopping Park &mall(アンドモール)」に導入して、ECサイト上の接客と店舗上の接客がシームレスにつながる「オンラインとオフライン融合(OMO)」という形で実施しました。「LaLaport CLOSET」内の商品と手持ち服のコーディネート提案を行うことで、手持ち服に合う商品を買い足すことができ、さらに着回しのバリエーションの増加につなげる仕組みです。

「LaLaport CLOSET(ららぽーとクローゼット)」での実証実験(PoC)の内容。現在はPoC終了

mySDG編集部:最近の導入事例ではアウトレットモール「SMASELL(スマセル)」と連携・協業を開始されたそうですね。「SMASELL」のECサイトでコーデ提案を受けられるということでしょうか?

荻田さん: そうですね。商品詳細ページ上で、AIスタイリストが着回しコーデを提案してくれるので、気になる商品が「どれくらいのパターン着回せるか」「どんな着こなしができそうか」を確認できます。さらに購入履歴と連携して、手持ちの服を使ったコーデ提案を表示してくれるので、ECサイト上の商品と手持ち服が合うかを可視化できます。そのため無駄買いを減らし、サステナブルな買い物体験を実現してくれるのがサービスの魅力でもあります。


mySDG編集部:今後導入する企業が増えれば、循環型ファッションの実現に近づけそうです。

荻田さん:そこを今まさに打ち出しをしているところですね。ただ、「SDGsの達成」と「売り上げ向上」の両立は、相反する難しいイメージで思い込まれてしまっているように感じています。SDGsの目標やサステナブルを達成すると儲からないみたいな……。実際はそうじゃないよということをセミナーなどでお話しているところです。

実際に「SMASELL」では、「手持ち服」を使ったコーデ提案を表示した場合には表示なしと比べてCVR(購入率)は7.6倍上回っています。つまり手持ち服と組み合わせて着回せることを訴求することで購入率を高める成果が出ているということです。

とはいえ、ECの現場担当者にとっては、目の前の数字がなにより重要になりますし、結局サステナブルではない売り方をしてしまった方が数字が上がることも実際にあるんです。その相反する印象をどう覆していくのかという点について啓蒙している最中ですね。

■オンライン・クローゼットが叶える未来のファッション体験とは?

mySDG編集部:これまでの事業運営を通して、やりがいや原動力となった成果について教えてください。

荻田さん:「XZ」の累計アプリダウンロード数が200万ダウンロード近くまで達成し、多くの一般ユーザーの方々に支持をいただいていることですね。「XZ-biz」に関しては、ECサイトや店舗に導入するサービスなのでBtoBですが、結果的にその先にいるお客様にリーチさせていくためのものなのでBtoBtoCなんですね。会社としては、エンドユーザーの課題を解決して、新しいファッション体験や生活習慣を創っていくところをやっていきたいので、その部分がある程度支持されて、規模が増えていることは純粋にうれしく感じています。そもそも起業してサービスを立ち上げたのも、BtoC向けのサービスの中で、ありそうでなかった新しい文化や新しい生活習慣・スタイルを創りたいという思いが出発点でした。そのあたりのユーザーニーズを満たせて、解決できていることは非常にやりがいを感じていますね。とはいえ、まだまだこれからという感じではあるのですが……(笑)。

mySDG編集部:今後の展開はどのようにお考えですか?

荻田さん:今後の目標としては、持ち歩けるオンライン・クローゼットを生活必需品レベルにまで、皆さんの暮らしの中に浸透させることですね。実店舗やECサイトで買い物する際に、自分のクローゼットの「手持ち服」と商品を合わせてシミュレーションできたり、コーデを提案してもらえたり、クローゼットを起点にしたファッション体験や買い物体験が当たり前になる世の中を目指していきたいです。そのためにも、「XZ」アプリのダウンロード数でいえば、直近で500万ダウンロードを達成することが一つ。「XZ-biz」の導入目標としてはECが300サイト、実店舗なら3,000〜5,000店舗に導入できれば、世の中に浸透してきていると感じられる目安になると思います。

XZアプリの具体的なサービスの内容については、「パーソナルライズ提案」(月額サブスク)として、骨格診断やパーソナルカラー診断に基づいた提案や、より個人の嗜好性や生活スタイルに沿った提案ができるサービスの導入も検討しています。とはいえ、現状のAIは学習データのお手本に近いパターンを正解として出すのが主なので、今後は肌の色や身長といった身体的な特徴とファッションの好みなどの嗜好性の両方を加味したサービスを提供できるようコーデ提案の精度を高めていくことも今後の目標としてあります。

mySDG編集部:より自分自身に合ったファッションがわかれば、無駄なお買い物も減りますし、手持ちの服を大切に使い続けるという思考にもつながります。今後の展開が非常に楽しみです。荻田さん、本日は貴重なお話をありがとうございました。

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